研究の実施計画

本研究では、東アジア4国・地域(下表:「研究対象地域」参照)に対し、東アジア福祉システムの分岐というマクロな制度領域による影響や変容に注目しつつ、特定地域への社会的不利の集中と、それに立ち向かうための社会開発実践が、地域コミュニティメゾレベルでどのようなセクターやステークホルダー間で形成されているのか、また実践されているのかに焦点を当てて研究を進める。

図 1研究対象地域及び特性

全期間を通した研究方法として、現場還元手法の方法論的な定立に向けた「アクションリサーチ」を実施する。現地に出向き、関連研究者と問題の共有に努めるとともに、共同研究を企画し、さらに科学的な実証研究に基づいた調査を積み重ねていく。

本研究グループでは、若手研究者とベテランの研究者がペアを組んで研究を実施する組織構成をとっている。

■ 年度別研究計画

■1.2020~2021年度は、研究メンバーに加え研究協力者も交えた専門部会(上記)を設置し、調査実施に向けた研究打ち合わせや研究課題に関連した研究会を開催する。それと並行した形で、各都市における社会的不利地域の支援や政策決定にかかわる行政機関及び関連施策担当官へのインタビュー調査、行政資料の収集及び統計資料の分析を行い、各国・都市における政策的な特徴を明らかにしていく。現在、コロナ禍による影響が続いていることもあり、Zoomやウェビナー機能によるリモート調査や研究交流も並行して行う。また、調査記録や対外発信用として、研究グループのホームページ及びSNSの運用や、ビデオカメラ等記録媒体によるアーカイブ体制を整備する。

1)研究グループのホームページ及びメーリングリストの作成

2)Zoomによる研究会の開催

第1回:(国内研究会:韓国・社会的不利地域における社会開発型居住支援にかんするウェビナー):2021年2月

第2回(国内研究会:中国・社会的不利地域における社会開発型居住支援にかんするウェビナー):2021年5月

第3回(国内研究会:台湾・社会的不利地域における社会開発型居住支援にかんするウェビナー):2021年8月

第4回(国内研究会:香港・社会的不利地域における社会開発型居住支援にかんするウェビナー):2021年11月

第5回:東アジアの社会的不利地域における社会開発型居住支援にかんする国際シンポジウム(オンライン):2022年2月⇒成果をまとめてブックレット(OMUP)として刊行

3)若手研究協力者輪読会の開催

※Social Development関連文献(関連文献参照)輪読会の開催

4国際ワークショップ及び現地調査の実施

2021年には、韓国のソウル市で「第10回東アジア包摂都市ネットワーク・ワークショップ」を開催し、国内外の研究メンバー間の研究交流を実施する。

  1. 現地調査の実施:ワークショップ終了後に、現地調査を実施(チョッパン・ビニルハウス地域・関連行政へのインタビュー調査)。

5)研究成果の発信

  • 研究会の報告等研究グループのホームページ、URPレポート、OMUPブックレット等で発信

■2.2022~2024年度は、本研究が目指す社会開発のモデル化と実践経験の交流の趣旨に沿って、当該国の大学をはじめとする研究機関専門家及び支援団体へのインタビュー調査及び質問紙調査※を行い、社会開発実践にかんする比較を行うと共に、研究交流にかんするネットワークの拡大を図る。前年度同様、毎年各国が持ち回りでワークショップの開催や実地調査を並行して行うことによって、国際共同研究の基盤形成に向けた取り組みを進める。

※各国の社会的不利地域を対象とした社会開発実践にかんする質問紙調査(郵送調査、現地協力団体に委託して実施)

■3.最終年度(2025年度)には、実践経験の共有に向けた東アジア型社会開発の学術研究や実践的な広がりを推し進めるためのプラットフォームの構築を目指す(2021年に発足できたらその強化を目指す。)。また、「東アジア型社会開発モデルの構築に向けた国際シンポジウム」を開催する。

◎.研究成果の発信及び着地点

1.東アジア包摂都市ネットワーク・ワークショップの開催

▲ 第10回ワークショップ:2021年ソウル開催

▲ 第11回ワークショップ:2022年大阪開催

▲ 第12回ワークショップ:2023年香港開催

▲ 第13回ワークショップ:2024年台湾開催

2.ICN香港(ICN-Hong Kong)の形成(2023年の第12回開催の際に発足できるよう働きかける)

3.東アジア包摂都市ネットワーク(EA-ICN)の形成

4.国際共著による書籍(日本語と英語)の刊行